Q&A

夫が勝手に私の名前を書いて離婚届を出してしまいました。私は離婚したくありません。どうしたらいいですか。

[離婚]

<ご回答>

1 離婚の無効

(1)  離婚届の有効性

 民法上、婚姻の無効については民法742条に規定がありますが、離婚の無効については特に民法上規定がありません。しかし、家事審判法23条では当事者間に合意が成立した場合に行える審判のケースとして協議離婚の無効の場合も含めて規定し、離婚の無効も法文上想定されています。民法742条では「人違その他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」(同条1項)に婚姻は無効と明記されており、同様に「当事者間に離婚の意思がないとき」すなわち、当事者間に離婚意思の合意がないときは、離婚も無効と考えます。判例でも当事者の意思に基づかない離婚は当然無効と判示されています(最判昭和34年8月7日・判時887号72頁)。本件のように、当事者間で離婚意思の合意がされないまま一方的に離婚届が出された場合、たとえその離婚届が受理されたとしても離婚は無効です。

 

(2)  戸籍の是正の手続き

 離婚無効の場合、離婚意思がなかったことを理由に戸籍是正を申し出ても、市役所の戸籍係には離婚届の有効無効を調査する権限がなく、戸籍の是正はできません。戸籍の是正をするには、離婚無効を法的に明らかにする家庭裁判所の審判書または確定した判決書を添付する必要があります(戸籍法114条)。

 

2 離婚無効の申立手続

(1)  申立手続

 離婚無効の申立には、まず家庭裁判所に家事調停を申立てる必要があります(調停前置主義)。調停の結果、当事者間で離婚無効について争いがなく離婚無効の合意ができれば、家庭裁判所は職権で調査の上、調停委員の意見を聴き、この合意が正当と認められるときは審判で離婚無効を確認します。この審判に対して、利害関係人が2週間以内に不服申立をしたときはこの審判は効力を失います。2週間以内に異議申立がないときは、この審判が確定し、審判書の交付を受け、役所の戸籍係へ提出し戸籍の是正をします。当事者間で離婚の無効について争いがある場合、調停は不成立となり、離婚無効訴訟を提起することになります。

(2)  離婚意思の不存在の立証

 離婚の届出があれば、離婚をしようとする意思があったものと推定されるので、調停や訴訟においては、離婚無効を主張する側が、離婚意思がなかったことを立証する責任があります。立証の資料としては、離婚届出用紙の写しを本籍地の役所から取り寄せるなどし、場合によっては筆跡鑑定などを行い立証します。

(3)  離婚無効の確定

 離婚無効の審判及び判決にて、離婚無効が法的に確定した場合には、離婚が存在しなかったこと、すなわち、結婚関係が継続していたことになります。もし離婚した状態になっている間に再婚した場合は、その再婚は重婚となり取消の対象となります。

 

3 追認

 離婚届の署名を勝手に書かれてしまった場合でも、そのような配偶者に嫌気がさしてやっぱり離婚したいと思うようなケースでは、離婚を追認することができます。無効な離婚の追認は戸籍の現状をそのまま認めることになり、判例上も認められています(最判昭和42・12・8・判時511号45頁)。離婚の追認の場合は、戸籍上の訂正などの手続きは不要ですが、不正に離婚届を出されてしまったという事態を解消するために、念のため、離婚無効の調停を提起し、その調停の中で離婚届の提出が無効であるとともに、あらためて協議離婚が有効であることを認める旨を示し、追認を明確にして調停を成立させておくのがよいと思われます。

 

4 刑事事件との関係

 離婚届に相手方に無断で署名押印し戸籍係へ提出することは、有印私文書偽造・同行使罪(刑法159条1項・161条1項)、公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)に該当しますので、勝手に離婚届を出した配偶者を刑事告訴することも可能です。

 

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